必要なムダになるために【ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門】
突然ですが問題です。
「13個のみかんを、3人の子どもに公平に分けるにはどうしたらいいですか?」
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もしかしたら、あなたの頭に「4個ずつ分け、余った1個は3等分にする。」や、「重さを計って同じ重量になるように分ける」とかが思い浮かんだかもしれない。
数学の問題なら、それで正解だ。
これはロジカルシンキングと言い、論理的に掘り下げて答えを探す方法である。
だが、現実でやると、本当に公平になるだろうか?
仮に個数で分けたら、大きさにばらつきがあったせいで、不公平に見えるかもしれない。重量で分けても、「私のだけ味が酸っぱい」と言い出すかもしれない。
「じゃ、ジュースにしたら良くない?」
そう。みかん全部をミックスして、飲み物にしてしまうのである。
普通に考えたら、この方法は出てこない。しかし、確かにその方法もある。これが本著で紹介する『ラテラルシンキング』だ。
「ああ!その手があったか!」と、思わぬ発想をひらめくこと。それがラテラルシンキングであり、「ずるい考え方」なのだ。
本著の『ずるい』は、不正行為や法律違反のことではない。柔軟な発想や、少し変わった角度から問題を解決しようということなのだ。
ちなみに、先ほどの“みかんの問題”に対して、私は「ケーキの材料にして、そのケーキを分ける」と答えた。
「え?」という突拍子もない答えであっても、ラテラルシンキング的にはOKだ。
※さまざまな材料が必要なので、めんどくさいが←
実際に『ずるい』考え方はどう活かされているかを、本著からいくつか紹介しよう。
1.どんなメリットが?
- かけるコストや労力が大幅に減る。
- 悪い局面も上手く利用できる。
実はこのラテラルシンキング、さまざまな有名な例で取り上げられている。
(画像:JR東日本HPより)
例えば、IC改札機は改札機そのものを長くした。そのおかげで、改札機を通る利用者が詰まってしまわないように出来た。
元々IC改札機は、運賃の計算速度が遅いという課題を抱えていた。
もちろん、計算速度を上げたり、改札機の数を増やすという選択肢もあったが、いずれもスペース・技術的に難しかった。
そこで、改札機そのものを長くすることは簡単なので、それによって計算速度の課題を解決したのだ。
(画像:Amazon販売ページより)
もう一つの事例である、J・K・ローリングは「ハリー・ポッター」の作者として有名だ。
実はその作品、彼女が失業中に書いたものだという。「失業中」は言い換えると、時間を存分に使えるということだ。
そう。会社・サービスの課題が困難でも、仮にあなたがコロナや病気で仕事を減らされても、発想の転換一つで乗り切れるのだ。
2.常識はなぜ疑えないのか?
ITの進化により、今までの常識が変わったという話は聞いたことがあるだろう。常識や慣習にしがみついた結果、時代に取り残されることは避けなければならない。
ラテラルシンキングをする上で、常識に囚われないことが大切だ。しかし、それが結構難しい。
なぜなら、学校の教育では、ロジカルシンキングに触れることがほとんどだからだ。一つの答えについて考えるのは得意な反面、正解が決まってない問題を考えることは苦手になりがちだ。
正解を求められて育った、そんな子どもが大人になったらどうなるか?「間違い」を出すことが怖くなってしまうため、自分の意見を出さないか、無難な発言しかしなくなる。
もちろん、その方が楽であり、発言の責任も取らなくて済む。
また、「変わった発言をする奴として、組織の中で浮いてしまうのが嫌だ」という人を私は多く見てきた。
しかし、「無難」で居続けると、言われたことだけをやる機械に成り下がってしまう。ただの機械なら、AIの方が優秀だ。
生き残るために、AIにとって苦手な発想力を今日から磨くのだ。
3.強者に必ずしもならなくていい
(画像:第1回 カマドウマの心を操る寄生虫ハリガネムシの謎に迫る /ナショナルジオグラフィック日本版サイトより)
ラテラルシンキングの一つに、真っ向から勝負しないという考えもある。
『弱肉強食』 という言葉の意味を思い出して欲しい。これは生き物の世界を説明する言葉だが、人間世界でも、結構当てはまらないだろうか?
「稼ぎたい」「お金がもっと欲しい」そんな願いを達成するために、一生懸命に頑張る人たちがいる。もちろん、年収が数千万に達する人を私はすごいと思う。しかし、そんな数千万の人たちも『弱肉強食』の輪の中からは抜け出せない。
お金が欲しいと頑張って稼いでも、資本力や権力では勝てない相手が存在するし、出会ってしまう。
パチンコで例えてみよう。パチンコには、それで稼げるプロと、お店を提供するオーナーがいる。
強者はどっちか?
どちらもお金を稼ぐが、資本も力関係もオーナーの方が強い。なぜなら、常に自身が勝てるように、ゲームをコントロールできるからだ。
一方、そんなオーナーも、国や海外のトップ事業家には勝てない。
このように、何事にも必ず上がいるということを忘れてはいけない。
『弱肉強食』という言葉を挙げたのには理由がある。明らかに自分が勝てない相手が現れた時、その対処法を知るためだ。
そこで、人間以外の生き物の戦略に目を向けてみよう。彼ら生き物は真っ向から勝負せず、上手に生きる方法を身につけている。
生存戦略には様々な事例がある。
- コバンザメのように、強い生き物のおこぼれを利用して生きる方法。(例:車販売メーカーと部品生産会社の関係)
- 寄生虫となって、強者の利益を吸い出す方法。(例:行列のできるラーメン屋の隣にラーメン屋を出し、妥協したお客を吸収する戦略)
- 自身の身を守りたいヤドカリと、自身の生活圏を広げたいイソギンチャクのように、互いの利害を一致させる方法。(例:機能で押したい自動車メーカーと、カーナビを売りたいメーカーのコラボ)
(参照 本著Kindle版 No.883より)
このように、人間世界でも、生き物の生存戦略をヒントにした手法が採られている。
もし、あなたも努力では強者に勝てないと踏んだなら、逆に強者には出来ない方法を採ってみよう。特別なポジションが取れたり、逆転できる可能性が見えてくる。
努力は必要だが、努力は全てではない。意外とユニークな奴が得をする。
あなたにも、もっと上手くいく方法が存在する。柔軟に考え、努力も変化も両方とも、必要な場面を見つけて使いこなすのだ。
4.ムダに見える人にも価値がある
どんな会社・組織にも、あまり生産性の高くない人は一定の割合で生まれてしまう。
かといって、優秀な人のみを残して、他を排除してしまうとどうなるか?
その残った優秀な人の中で、
- “優秀な人”
- “そこそこな人”
- “全然働かない人”
に分かれてしまうのだ。
では、「全然働かない人」は邪魔者にしかならないのか?
いや、実はメリットがある。
アリの話を下記画像で紹介しよう
(イラスト:ふじわらのりこ ©︎朝日学生新聞社)
アリにも交代要員が必要で、働かないアリがいなければ、組織は機能停止してしまう。
もし、効率だけを追い求めた人しか、組織にいなければ…真面目・窮屈で、ギスギスした雰囲気になるだろう。
人員の”ゆとり“を少し持たせれば、繁忙期にも対応しやすいだろう。また、いじられキャラ・ムードメーカーという“ゆとり"な存在は、組織の潤滑油にもなれる。
なぜ、ここで“ゆとり”が出できたか。
例えば、アクセルとブレーキの間には、「遊び」という“ゆとり”が存在する。この“ゆとり”がないと、急発進と急ブレーキしか出来なくなるので、安全のために必要なのだ。
さらに、「全然働かない人」は、(比較的)働き者ではないからこそ持つ能力がある。
彼らにとって、冒険のハードルは低く、そこからの発見もあるだろう。また、楽をする性質があることで、そこから斬新なアイデアが出てくることもあるのだ。そんな冒険や発想力が一つの能力なのだ。
だから、もし組織での評価が低くても、くよくよすることはない。特別な能力が開花するチャンスに恵まれているのだから。
だからといって、発想力を鍛えることをやめると、どうしようもなくなるので、その訓練は忘れずに。
5.読んだら何から始めてみる?
早速忘れないように、私も訓練方法を挙げていく。
・物の使い方を何通りも考えること。
物には、その本来の使い方とは別の使い方が可能だ。
例えば、新聞紙はニュースを読むだけではない。野菜を包んで冷蔵庫に入れたり、油掃除に使ったり、火を付けるのにも使える。
これを30通り出す練習をするのだ。
これはやってみたが、かなり難しい。如何に私たちが、本来の使い方に縛られていたかがよく分かる。
不用品でも何でもいい。新しい使い方が見つかれば、思わぬ生活の知恵や発明をもたらしてくれる。
・2つのものを組み合わせる。
これは起業プランや企画を考える際に必要だろう。
全く新しいアイデアを作るのは難しいが、既存のものやシステムを組み合わせると、アイデアは無限大だ、
例えば、私のお気に入りの「BAND-MAID」は、バンドとメイドを融合したバンドだ。
(画像:BAND-MAID Official Web Siteより)
メイドの”可愛い“
バンドの“カッコいい”
を上手く取り入れたグループであり、その姿でハードロックを演奏するというギャップにより、世界中で大人気だ。
このように、日頃から様々なことに興味を持ち、目にしたものを頭の中で混ぜてみる。そんな取り組みで大ヒット商品がきっと生まれる。
・スベるのに慣れる
アイデアが思いついたら、アウトプットすること。さもなくば、学んだつもりになっただけで、何も本著から学んでいないことになる。
その時に大多数が気にするポイントは、「スベったり、変な空気にしてしまったらどうしよう…」である。
もし、これが会社の会議なら、そんな雰囲気や社風にさせた時点で経営者の失敗だ。とは言え、目の前の課題を人のせいにするわけにいかない。それで会社が衰退して倒産したら、話にならないからだ。
私は幸運にも、高校生ぐらいからスベるのには慣れていた。
会社や雑談でアイデアを求められる時も、「とりあえず何か言ったら、進展あるかも!」というスタンスで、思いついたことを言う。そして、「それはナンセンスでしょー」とツッコまれるまでがテンプレだ。しかし、たまに「それは面白いね!」と採用されることもある。
採用されるアイデアとは、たまに出るホームランのようなものと考えたら、気が楽になるだろう。
他にもAppleやKDDIなど、たくさんの『ズルい』実例が登場するが、気になる方は是非本著を読んでみて欲しい。
発想力の鍛え方はまだまだあるので、あなたに合う方法が見つかるかもしれない。
そして最後に、
もし、あなたが社会の絶え間ない競争に疲れてしまったら、一度競争のステージから離れて、『ずるい』戦略を考える転機が来たと思ってみよう。